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純白の疑い

アレックス×雅子


「好きだ雅子、付き合ってくれ」

今月に入って30回目の告白、
どうやら私は我が校のイケメン帰国子女の師匠であるこの金髪メガネに気に入られたらしい。

「はぁ、」
「はぁ、じゃないだろ⁈こっちは本気なのに‼」

本気も何も女が女に告白する時点で本気かどうか疑わしい、そもそも氷室から聞いたボブかマイクか忘れたがその彼氏はどうした。
そんな事を思いながらため息をつき前を見ると、アレックスが不安そうな顔で背を屈めながら見つめている。

荒木は考えに考え抜いた結果新しい彼氏が出来るまでさみしさを紛らわせるのに誰か必要なんだと解釈し、目の前で子犬のように潤んだ瞳で見つめ不安そうにしているアレックスの手を取った。

「好きにしろ」
「ほ、本当にいいのか!?F
oooooo!!やったー!」

子供のようにはしゃぐアレックスを見ながら、別れてすぐは辛いって気持ちはわからんでもないから気が済むまで仲良くしてやるか、と思いながらはしゃぐアレックスを見た


****


「それでアレックスはどうなんです?」

壁に座り込みながら汗をぬぐいながら聴いて来る氷室に一瞬だけ目だけ動かしたが、また部員同士のミニゲームに視界を戻した。

「どうもこうも、やたらとメールが来るわ英語でメールが来たかと思うと途中から全文ローマ字になるわ、泊まりにきたらアニメ映画ずっと見てるわ…」
「相変わらずだなぁアレックスは」

ははっと笑う氷室にあいつのアタックの強さには困ったもんだ、と思いながらまた氷室を見た。

「あいつ、彼氏居たんじゃないのか?」
「あぁ、アレックスの彼氏ってだいたいしつこくつきまとわれたから適当に付き合って適当に別れるのが多いんですよ」

だからアレックスから告白するなんてかなり珍しいんですよ。
そういう氷室に荒木はさらに不思議そうな顔をして試合終了のホイッスルを吹いた。

なんで私なんだ…?
特別にかわいいわけでもなければ、若くもないし、色気も無い、そして私は…男じゃない。

愛され好かれる要素がまったく無いのに何故こんなに好きだと言われるのかがまったくわからない。

「気まぐれなら早く飽きてくれ、」

そんな事を取り留めもなくグルグルと考えながら帰路についていると、誰かに後ろからいきなり抱きつかれ背中に柔らかなモノがむにゅぅんっと当たった。

「おいアレックス…」
「なっ、なんでわかるんだよ⁈変装したのに!」

振り返ると帽子をかぶりサングラスをかけているとても変装とは言えない姿のアレックスがいた。

「ただいまダーリン」
「弘道で抱きつくな、前にも言っただろ」
「雅子冷たーい、優しくしないと浮気しちゃうぞっ!」

勝手にしろこのバカと抱きつくアレックスを引き剥がしアパートに戻りドアを開けると、風呂場からベッドまでをたどるように点々と服が脱ぎ散らかされている。
荒木の逆鱗に触れてこっぴどく怒られるのに時間はかからなかった。
アレックスが日本に来るたびにそんなくだらない日々が続いていたが、言うほど悪い日々ではなかった。


けどそんなくだらなくもそこそこに楽しい日々がは次第に少なくなり無くなって行った。

アレックスが最近よそよそしい、日本に来てもあまりウチには泊まらなくなったし町で会ってもどこか他所よそしい。

そしてついに連絡が一切取れなくなった。

何も言わずにふらっといなくなる事は良くあったがすぐにかえって来ては「寂しかったよダーリン!」と国際電話をして来るのが普通だったがそれすらない。

「彼氏でも出来たか。」

ソファーに座りポツリとつぶやくと部屋の静けさに虚無感を感じてしまう。

まぁ女同志なんて最初からうまく行かない事は分かってたしこうなる事も予測出来ていたと荒木は頭の中で思いを巡らせTVを付けた。
向こうも本気ではなかっただろうし、最初から終わりの見えた恋人ごっこに付き合っただけなのに。
それなのに自分はいつから演技が演技じゃなくなっていたんだろう…

あぁそうか、

「私はアレックスの事が好きになっていたんだな…」

またつぶやき天井を眺めると涙がポツリポツリと零れて来る、嗚咽が出ずにはらはらポツポツと泣いているのはきっとこの現実を冷静に受け取ている自分がいるからだと思うと余計に辛くなった。


ガチャッ

「雅子ー!二人の付き合って一年のお祝だー!Foooooo!!」

ドアを開けて入ってきたのは金髪巨乳で赤いメガネをかけ片手にはパーティクラッカーを持ち頭には三角帽子を被り[愉快]と言うのをそのまま形にしたような姿のアレックスが荒木を見て、嬉し泣きにはまだ早いぞー!と軽く荒木の頬をつねった。

「なんでここにいるんだよ、お前は彼氏とアメリカで元気にやってるんじゃ…」
「なんだそりゃ、誰がそんな事言ったんだ?」

はんっ!と言われたことを鼻で笑うと荒木は先ほどの泣き方とは違い子供のようにボロボロと泣き始めた。

「バカ…アレックスのばか!てっきりもう、ダメかと思った…!」
「ダメって?」

「捨てられたかと、思った!」

いつもの冷静な姿からは想像も出来ないぐらいの姿にアレックスは抱きしめながら頭を撫でてしゃくりあげて泣く荒木を慰めた。

「捨てるわけないだろー!?初めて会った時から今でもずっと大好きなのに!」

よしよしと頭を撫でて涙を指で拭うと荒木は耳まで赤くしながらぎゅうっと抱きつきアレックスを見つめた。

「好きだ、私はアレクサンドラが好きだ…!」

震える声でようやくわかった自分の思いを叫ぶと、アレックスは目を細めて嬉しそうに笑いかける。

「やっと聞けた…雅子の本当の気持ち、嬉しいよ雅子」

嬉しそうに笑うアレックスにつられ笑い、コツンと額同士をくっつけるとどちらともなく目を閉じ柔らかな唇が触れあった。
どうやら私はやっとわかった最愛の人と演技ではなく本当の意味で両思いになれたらしい、そんなことを考えながら荒木はまた目を閉じた。

プラトニックノイズ

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