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赤い主人と黒く透明な執事

「たまには違うことをしてみないか?」


赤司のその言葉ですべてが始まった

「(あの、俺は気持ちだけで結構ですから…服を返して下さい…)」
「嫌だ、1度やると決めたからには完璧にしなくては赤司家の恥だ。完璧に水戸部の業務をこなしてやる」

 

そう言ってやる気に満ち溢れている赤司を見て水戸部は不安になった
ことの発端はお互いの業務を取り替えると楽しいのではないかと言う赤司の気まぐれでから始まった
お互いの業務を取り替えると言う事は赤司は水戸部の燕尾服を着て執事を水戸部は赤司の服を着て主人をやると言う事だが
水戸部の背丈では赤司の服は小さすぎてどれも入らないので特別に私服が許された

「(まず何からやるんですか?)」
「待て待て今日は俺が執事なんだからお前敬語使わなくていい」
「(そうですか、では…一体まず何からやるんだ?そもそもやり方とか知っているのか…?)」

水戸部はいつもの敬語とは全く違う男らしい喋り方で話すと一回り大きな燕尾服を着た赤司は少し顔を赤らめたが冷静を繕い
まずは料理だ!と屋敷の厨房へと向かった
だが赤司が厨房に入るないなや食器をいくつも壊し、乾燥調味に水が飛んでダメにしまったりして厨房がしばらく使えなくなるも赤司本人は全く気にせず次は掃除だ!部屋に向かうぞ!と張り切っていた
水戸部は次起こる事をだいたい予測できたがその予想は自分の考えすぎによるオーバーな妄想劇になるだろう、いやなってくれと心から念じたが


予想は予想以上の最悪の状態で現実の物となった


「初めてにしてはまあまあの出来だな!」
「(旦那様に叱られてしまう…)」
「父様には俺から言っておくから何も気に病む事はないぞ、しかしこれでは今夜自室で眠るのは不可能だな」
「(どうして掃除だけで、ベッドに大きな穴が空くんですか…)」
「む、また敬語に戻ってるぞ。これは躾も兼ねて今夜は水戸部の部屋に泊まるしかないな。それしかない」

そう言うと赤司はいそいそとベッドの下から小さなスーツケースを取り出した
中にはお泊まり用品でも入っているのだろうか


「(まさか、このためにここまでしたんじゃ…)」
「お前はたまに憶測で物を語る時があるがそれは悪い癖だ、赤司家時期当主が友人と仲良く友人宅に泊まるお泊まり会とやらに憧れを抱いているわけがなかろう」

この人は嘘をつくのが下手だなぁと思いながら
厨房と寝室の片付けてからならいいですよと言ったら赤司はなんだかすごく嫌そうな顔をしていた

 


******


「(やっと終わった…)」
「掃除に熱心になり過ぎだ、もう夜だぞ」
「(勝手に紅茶入れたりするからポットの蓋を落として紅茶と割れたポットを撒き散らしたりするから掃除する手間が二倍になるんだよ…)」
「いつも水戸部に入れてもらっているからこれからもそうするつもりだ、この紅茶ポットは重すぎる」

そう誇らしげに赤司は言ったが水戸部はこの人は財閥のお坊ちゃんじゃなければどうなっていたんだろうと少し不安になる

「とにかく今日はとても疲れた、風呂に入ってくるから水戸部は客人をもてなせるように自室を片付けておけ」

そう言っていそいそと赤司は水戸部の部屋を出て風呂に向かって行った
水戸部は一体誰のせいでこんな夜中まで掃除をする事になってるんだ…
と思ったが風呂上りに客人をもてなす準備ができてないとか赤司に小言を言われないように水戸部はそれなりにもてなす準備に取り掛かった

「(あの人のわがままにも困ったものだ…)」

そう言って水戸部は月明かりを消すようにカーテンを閉めた
外にある月は高いところから淡い光を放っていた
しばらくすると赤司が寒そうにしながら帰ってきた

「あの風呂はなんだ、すきま風がひどくて寒いから今度作り替えるように父様に言っておく。よくあんな風呂に入ってられるな…」
「(使用人用の風呂に入ったんですか!?そんなところまで俺に合わせなくてよかったのに…)」
「赤司家時期当主たるものこれくらいのことができなくてどうする、今日はもう寝る水戸部も一緒に寝ろ」

そう言って赤司は水戸部をベッドに押し込み一緒に寝ようとしている
ふわりと清潔感漂う石けんの香りがする

「ん、少し狭いがまぁいいだろう」
「(ちょ、ちょっと赤司様!いくらなんでもこれはダメです!執事と主人が同じベッドで寝るなんていけないことです!)」

そう言って水戸部はベッドから出ようとすると赤司に腕を引っ張られまたベッドの中に戻された
なんだか顔つきがウキウキしているように見える、気がするが気のせいであって欲しい…
水戸部はそう思ったがその願いすら叶わなかった

「(あの、赤司様…?)」
「なんだ水戸部」
「(何故俺の上にまたがっているのですか、あとどうして手首を縛るのですか?)」
「なんだ、そんなこと最初からわかっているじゃないか。今日は俺が執事でお前が主人だろ?」
「(そうですけど、まさか赤司様…!?)」

この次にどのようなことになるかを理解してしまった水戸部は必死に抵抗したが逆に相手の好奇心をそそるような結果になった

「そんなに必死に逃げようとしなくてもいい、後から逃げようなんて気持ちは起きなくなるからな…」

そう言って水戸部の手首をネクタイで縛り上げ楽しそうに笑った
明日の業務に差し支えが出ないことを水戸部は願いながら赤司のなすがままになった

 

プラトニックノイズ

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