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​夕焼け

久しぶりにメガトロンと一緒に買い物ができた!
嬉しそうに笑いながら袋に買った商品を詰めているのを見ながら、メガトロンは空になったカゴとカートを規定の場所に戻し、バンブルビーの横に立った。

「お前は働いていて忙しいのだから、買い物は我に任せたままでもいいのだぞ?」
「たまには一緒に行ってもいいでしょ、それとも嫌だった…?」
「嫌なわけがないだろう、ただ…」

メガトロンは言葉がつまり口ごもった。
…ただ、お前がいらぬ気を使っているのではないかと思うと。
そう思うと、なんだか申し訳なくなる。
メガトロンは言葉を出す事なく、そのまま飲み込んだ。
もともとバンブルビーは、誰かに気を使ったりするのは苦手な方だった。
けれど今は上司に気を使ったり、士官候補生との距離の取り方などでいろいろと頑張ってきたりしているのだ。
…だから家事は全て任せてもらいたいのだが。

「どうしよう…!買ったものが袋に入りきらなくなっちゃった…!」
「入れ方が悪い、貸してみろ」

メガトロンはバンブルビーから袋を受け取ると、商品を詰め直して新たな空間を作り、そこに入りきらなくなった商品を詰めているのをキラキラとした目で見つめている。
…まぁ本人が楽しそうだし良しとするか。
メガトロンは重いものが入った方の袋を持ち、行くぞ、とバンブルビーが袋の口の中央を軽くリボン結びに縛ったのを見て歩き出した。

「待ってよメガ、そっちも持つって」
「そう言ってこの前、重い方をもたせたらすっ転んで、瓶を壊したのはどこのどいつだった答えてみろ」
「あの時は地面に亀裂があって、そこにつまづいただけで…もぉー!わかったよ!それはメガが持って!」

わかればいい、と姿勢を正して歩くメガトロンの無言の圧力に屈したバンブルビーは、ぶちぶち文句を垂れていたが。

「…っわ!」
「夕焼けか…」

全てを茜色に染め上げるほどの光に、先ほどまで出ていた文句はどこかに消えてしまった。

「すごい綺麗だね…」
「そうだな」

茜に染まる世界を見ていると、世界が彼の色に染まったかのような錯覚を起こしてしまう。
そう思うと、頬を撫でる風さえ愛おしくなってしまうなどかなり重症だ。
けれどここにメガトロンが居て、自分が居て、今は一緒に暮らしている。
それはようやく当たり前になった二人の光景だかバンブルビーにとっては、全てが大切な日々なのだ。
…戦争中は一緒に歩くなんてできなかったしなぁ。
戦争が終わってもすぐにできなかったが、今はこうやって横を向いたらすぐそばにいる。
その事実が嬉しくてたまらない、そう思うとどうしても口角が上がってしまう。
それに、なにより。

「楽しそうだな」
「ん?だってさ、なんかさ…」
「なんだ」
「デート、みたいだなーって、思って…」

バンブルビーは言ったそばから真っ赤になり、言うんじゃなかった…!と後悔した。
…ただの買い物の帰り道なのに変だよね。
ただの買い物の、ただの帰り道なのに、こんなことを思っているだなんて、自分だけが舞い上がってるのがよくわかってしまい恥ずかしい。
きっと今まで、まともにデートらしい事をした事がないせいだろう。

「デートだと思っていたのだが、違っていたのか…」

思い過ごしだったか、とつぶやいたメガトロンの言葉にバンブルビーは自分の顔に熱が集中していくのがわかった。
…なんでそんな事が言えちゃうんだろう。
そんな事言われたら、と思っているとメガトロンの視線に気がつき、ついいつもの癖で振り向くととても優しく穏やかな表情を浮かべていた。

「やはり、お前は可愛らしいな」
「や、やはりってなんだよ…!」

もう!と顔を逸らしたが頬は依然として赤く、スパークもまだ高鳴ったままだった。
…どうしよう、どんどん好きになる。
あぁもう…!とメガトロンの穏やかな表情を思い出すと、胸の奥が熱くなってしまう。
愛しさと気恥ずかしさに耐えきれずバンブルビーは俯いてメガトロンの横を歩いた。

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