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​海

海ってなに?
ビープ音を鳴らしながらラフに問いかけると、ラフは優しく笑ってパソコンで調べ始めた。

「えっとね、海っていうのはこの星の大部分を占めている塩分を含んだ水の事で、海の中にはいろんな生き物がいるんだよ。」

不思議だよね、とラフは笑って呟いた。
そんな昔のたわいもない話を思い出しながら、目の前のラフを見る。
これからサイバトロン星に帰り最後の戦いとなる、もうラフや地球のみんなと会う事はないだろう。
そう思うと悲しい気持ちが溢れたが。

「バンブルビー」

ラフは涙を目にためて気丈に笑って見せた。

「大丈夫だよ、きっとまた会えるから」

だから大丈夫、と笑ったラフの目は涙が溢れだしそうだった。
海が溢れたような気がした。



「地球の海は綺麗だろ」

あれから月日がたち、再び地球に戻って来て海を見るとあの時と同じ香りがした。
ほんの少し悲しくて、寂しくなる、そんな香りだ。

「この中にはいろんな生き物がいるんだ」

あの時の彼は、一体どんな気持ちを涙の中に隠していたのだろうか。
もし今の自分を見たら彼は何と声をかけてくれるだろうか。
…今どうしているんだろうな。
水平線の彼方にあの日の旧友の事を思った

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